【大の親不孝者にほうびを与えた水戸黄門】ゼロからわかる仏教
有名な水戸黄門光圀が、領内を巡視中のことである。
かねて、親孝行者に、ばくだいなごほうびをくださるという、老公のうわさをきいていた大の親不孝者。
ほうびをせしめるチャンスとばかり、平素、虐待し続けていた母親を背負って、さも孝行者らしく、老公の行列を拝していた。
ふと光圀公が、それをご覧になって、側近に命じた。
「あの者に、ほうびをとらせよ」
「なんと仰せられます。彼奴は人も知る、大の親不孝者でございます。今日、あのように母親を背負って行列を拝しているのは、殿の御目をあざむき、ほうびほしさのためでございます」
世間周知の事実を申し上げても、 ウンウンとうなずきながら老公は、こう諭したという。
「ウソでも、偽りでもよいではないか。形だけでもよい。そして今日一日だけでもよろしい。一度でもああして、親を背負ってやることが大切なのだ。うんとほうびを与えよ」
朱に交われば、赤くなる。
善人とつきあえば、おのずと善心がよみがえってくるものだ。善いことは、まねでもせよ。
「光に向かって」より